劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン 感想 ~時代は変わる、されど紡いだ言葉は永遠である
忘れられない昨年の放火事件、さらにコロナ禍も重なって大変な状況の中、
延期を重ねながらも作品が発表されたことに喜び、感謝の思いを抱いて映画館に向かいました。

上映は舞台挨拶中継付きの回を鑑賞。
本編→舞台挨拶ライブビューイングの流れだったのですが…
5,6回ほどマジの涙を流してマスクがビショビショになった件
本編はもちろん、舞台挨拶でも涙してしまいました…
石立監督らの感極まる姿、これには感動せずにはいられません。
あまりに悲しく、理不尽な現実を乗り越えて人々に希望を与え続ける。
クリエイターが抱く不屈の精神に、改めて敬意を表します。
さて感想ですが、ネタバレを極力避けつつTwitterで書いたのが↓
過去と未来を交差させたり、TVシリーズの各エピソードが巧みに結びついたりする構成に驚いた。
— やぶろっきー (@yabu_tinad) September 19, 2020
これでヴァイオレットの物語は終わり、また『自動手記人形』の物語も終わったのだろう。しかし人が生きた証、暖かさは確かに残ることを伝えている。涙せずにはいられない #ヴァイオレットエヴァーガーデン pic.twitter.com/acxfkitxLZ
これ、1ツイートの文字数制限ギリギリで書いてますけど、思ったこと全部伝えるには全く足りないですww
それほど思いが溢れすぎて、まとめるのは非常に苦労しました…
一方、ここはブログだから書き放題!
まずはネタバレを避けつつ…感想を3ポイントに分けて書きます。。。
①構成の巧みさ
上記の通り、映画はヴァイオレットが生きる場面だけでなく、未来での物語も含まれます。
さらに、さまざまな依頼者が登場する群像劇であったテレビシリーズが見事に繋がっている。
身分も場所も時代も全く異なる人物たちが絡み合い、ヴァイオレットを中心とした1つの物語として完成しているのです。
ヴァイオレットとギルベルト2人がメインとなるストーリーという予告だったため、ここまでお話が広がるとは予想外でした。
正に「完結編」に相応しい壮大さです。
②真っ直ぐな「愛」の形
各インタビューや舞台挨拶で石立監督が仰っている通り、この作品は「あいしてる」に対して真っ直ぐに生きた、ヴァイオレットという一人の女性を描いたものです。
そして、これを見た人も「あいしてる」の優しさに気付いて感謝することができれば、という思いが込められています。
本作でヴァイオレットは「あいしてる」を伝えることになるのですが、
これに留まらず作中では様々な愛に出会うことができます。
それらの愛を伝えるまでには楽しいことだけでなく、ぶつかり合いや悲しい別れもある。
しかし、お互いを想う心は決して引き裂かれない。不変で、温かいのです。
これでもかと言うほど溢れる愛。
多くの人が感動し、涙するのも納得です…耐える方が難しいね。
当たり前だけどつい忘れがちな、身近な人への感謝を再確認させてくれます。
③「時代」の変化
テレビCMの予告で、「時代は変わる」というセリフがありました。クラウディア(cv.子安武人)が言ってたかな。
後述のネタバレあり部分でも語りますが、私が大きく注目したポイントはこの時代の流れについてです。
作中で描かれるのは、戦禍に生きるヴァイオレット(過去)、終戦後に自動手記人形として成長するヴァイオレット(現在)、数10年後に語られるヴァイオレット(未来)…大きく分けるとこの3つ。
この間に人はもちろん、人々を取り巻く様々な環境も変化していきます。
平和で便利な世になるのは良いことですが、一方で失われることもある。
どんなに栄華を誇ろうとも、何代の歴史があろうとも、時代の流れには勝てません。
しかし、形は消えようとも、語り継がれて残されるものもあります。
ヴァイオレットら自動手記人形は「手紙」によって言葉を紡ぎ、人々を繋いできました。
それがどんな姿で未来に生きているのか…を見届けることで、真の完結を迎えるのです。
この度完結を迎えて、私は「美しい変化」だと感じました。
数10年の出来事は地球上の歴史から見たらちっぽけかもしれません。
しかし、人々が生きた「尊い歴史」を実感し、また涙するのでした。。。
ネタバレ避けだとこんな感じか。
初見でも十分に楽しめる作品ですが、やはりテレビシリーズと昨年公開した外伝を見ていると感動の度合いが違いますね。
あと、大人ほど心に響く作品だと思うので、、、
アニメだからと言って軽視せず、幅広い年代の人に見て欲しいです。
次に、ネタバレ込み感想をば。
~~~~~~~~~~~~~~~(以下ネタバレあり感想)~~~~~~~~~~~~~~~
④語り手・デイジーの役回り
映画始まって数分で泣ける…と専らの評判ですが、、、
確かに、あのテレビシリーズ10話と繋げて来るとは完全に予想外でした。
10話は特に人気のあるエピソードだけに、改めて怒涛の親子愛あふれる手紙ラッシュを見せられたら…もう…もう…(言葉が出てこない)
そこが起点になって、ヴァイオレットの足跡を辿る、という構成がまたいいですね。大河ドラマっぽくて好み。
アニメだと「ある人物の歴史を第三者が語る」ってあんまりない気がするなぁ。
それも、場面転換や足跡の辿り方も自然で、全く無理がないのが素晴らしい。
祖母の手紙を見つけて旅に出る→旧C.H郵便社(博物館)を見学→エカルテ島の話を聞く
→エカルテ島の郵便局を訪ねる→両親への感謝の思いを手紙で伝える
実に、実にシンプルで美しい流れです。
この間に本編であるヴァイオレットのお話、たくさんの「あいしてる」が溢れる物語が挟まれ、ラストの手紙で〆。
ラストの全文は分かりませんが…ヴァイオレットたちの物語を追い、デイジーの両親の表情を見れば、各々がきっと、温かい答えを出せるのではないでしょうか。
⑤声優さんたちの演技
喜び、悲しみ、涙…全編通じて常に感情が溢れているため、キャラの表情と声には注目したいところ。
思い出深いシーンがたくさんありすぎて書ききれませんが…特に印象的なヴァイオレットとギルベルトが海岸で再開するシーンについて。
お互いが涙している表情、喜びと悔いとがぐちゃぐちゃになりながら愛を訴えるギルベルト、必死に言葉を伝えようとするヴァイオレット…
この情報量が鑑賞者にもドッと流れて来る感覚よ。嘘偽りない、もはや演技を超えた声優さんたちの力に脱帽です。
特に、ヴァイオレットがいざギルベルトに再開したら、もはや何を伝えたらいいのか分からない程の状態になっていたのが真に迫っていましたね。
石川由依さん、お見事でした。
⑥歴史を紡ぐ人々
前述の通り、個人的な注目ポイントに「時代の流れ」を挙げました。
これは私が歴史オタクなこともあるのですが…作中で博物館やエカルテ島の郵便局など、「歴史が消えないように人々が語り継ぐ文化」がたくさん描かれている点に感銘を受けたこと。
一方、本作はヴァイオレットの物語が終わるだけでなく、手紙の必要性は薄れ、識字率が上がったことで「自動手記人形の物語」も終わると描写されたこと。
上記2点から、「時代変化で失われることの憂い」と「歴史を語り継ぐこと」との盛り込み方が絶妙だと感じた故の注目ポイントです。
新しいものの象徴は電話でしょうか。
ユリスの最期に電話を出し、離れていてもすぐに言葉を伝えられる手段を見せています。
そして時は流れ、デイジーの時代でヴァイオレットたちがいたC.H郵便社は博物館となっています。
一抹の寂しさを感じつつも…クラウディアを中心とした集合写真、自動手記人形の道具などが展示されているシーンを見て、嗚呼、この世界の人々はここにあった文化の灯を絶やすことはないのだな…と感動するのです。
会社の跡地が博物館になってたり、展示物の並べ方一つ取ってもリアルなのが流石京アニと言ったところか。
そう設定するのは簡単ですが、背景や小物の美術がしっかりしていないと訴え方が違いますよ。
最後には博物館で見つけた「あるもの」を頼りに、デイジーがエカルテ島の郵便局を訪れるシーン。
博物館のような施設はないものの、未だ郵便が盛んなこと、それが一人の慕われた女性によるものだという確かな歴史が語られます。
小さな島だからこそ、古き文化が残るというのも非常に筋が通っていますよね。
そして博物館にあった「あるもの」が、切手だと明かされます。
この見せ方も最高だし、何より切手と言うアイテムがいい…手紙がキーアイテムの作品で歴史を残すものとしてピッタリじゃないですか。
以上感想でした。
繰り返しますが、この作品は余りにも多くの出来事が重なった後に生まれました。
それでも、皆が素晴らしい、見て良かったと言える、特別な映画であったと自信を持って言えます。
改めて制作陣への感謝を表し、京アニの復興を願います。
最後に、この作品を語り継ぐため、もう一度刻みます。
彼女の名は―――
ヴァイオレット・エヴァーガーデン
では。
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